本の感想

静かな印象を与える人の内面ほど面白いものはない『僕の人生には事件が起きない』感想文|岩井勇気

2月 7, 2020

岩井勇気(いわい・ゆうき)『僕の人生には事件が起きない』を読んだ。

ハライチと言えば見た目やキャラクターから、澤部佑ばかりに注目が集まりがちだが、漫才中に澤部に適度なお題をテンポ良く提供している岩井勇気も見逃せない。

あまり好きな表現ではないが、”じゃない方芸人”の人が実は面白いというのは鉄板だ。

オードリーの若林がピンでバラエティ番組に出ている理由も頷ける。

ハライチのじゃない方芸人である岩井氏が出す本となれば、内容を確認しなくても手に取ってみようと思った。

今回は、その『僕の人生には事件が起きない』の感想を書いていきたい。

僕の人生には事件が起きない

内容紹介

日常に潜む違和感に芸人が狂気の牙をむく、
ハライチ岩井の初エッセイ集!

段ボール箱をカッターで一心不乱に切り刻んだかと思えば、
組み立て式の棚は完成できぬまま放置。
「食べログ」低評価店の惨状に驚愕しつつ、
歯医者の予約はことごとく忘れ、
野球場で予想外のアクシデントに遭遇する……
事件が起きないはずの「ありふれた人生」に何かが起こる、
人気エッセイがついに刊行! 自筆イラストも満載。

引用:amazonより

 

目次

はじめに

メゾネットタイプの一人暮らしでの出来事
家の庭を〝死の庭〟にしてしまうところだった
自分の生い立ちを話せない訳
ほとんど後輩と連まない僕と仲の良かった後輩
「ショッピングモール満喫ツアー」の暗闇に潜む化け物
マニュアル至上主義の店
忘れる、という能力者
コーヒーマシーンに振り回される
組み立て式の棚からの精神攻撃
あんかけラーメンの汁を持ち歩くと
珪藻土と自然薯にハマった
食べログ信者の僕が3・04の店に行ってみた
ルイ・ヴィトンの7階にいる白いペンギンを見張る人
『叫び』に魅了されて理解したアイドルファンの心理
リアル型脱出ゲームで出会ったオタク
麻雀の不吉な上がりのせいで死に怯える羽目になる
野球嫌いの僕が落合福嗣と神宮球場へ行った
通販の段ボールを切り刻んで感じた後味の悪さ
組み立て式の棚、ふたたび
仕方なく会った昔の同級生にイラつかされる
恐怖に怯えたタクシー運転手の怪談話
空虚な誕生日パーティ会場に〝魚雷〟を落とす
VIPも楽ではない
親戚の葬儀での面倒くささから救ってくれた父の一言
澤部と僕と

おわりに

引用:amazonより

 

感想

本のタイトル通り、これといった事件は起きない。

言い方を変えれば平凡な日常である。

ただ、その日常を、独特の考え・考察で過ごす岩井氏の面白さがふんだんに詰まった本だった。

個人的に一番好きだったのは、あんかけラーメンの汁を持ち歩くとのエピソード。

その話は、風邪をひいて喉を痛めたことで、喉の炎症を抑えるため、生姜にハチミツを入れたドリンクを作ったところから始まる。

step
1
生姜とハチミツのドリンクが喉の痛みい効く気がした

step
2
そのドリンクを仕事場にも持って行きたくなり、水筒を購入

step
3
ハチミツが大量に入っている=高カロリー=寿命を縮めてるのでは?という気持ちに

step
3
2週間近くで喉は回復

step
4
当時インスタントのあんかけラーメンが岩井氏の中で流行。特に汁が好き。

step
5
このスープをいつでも飲みたい

step
6
生姜とハチミツドリンクを飲んでいた時の水筒あるじゃん!

となり、あんかけラーメンのスープを水筒に入れて持ち歩くようになった。

その流れも面白いが、水筒に入ったあんかけラーメンの汁を様々な場面で飲みながら考えていることが面白い。

駅のホーム

駅のホームという公共の場であんかけラーメンの汁を飲むという、僕だけが感じている非日常が、また1つのスパイスになり美味しさを増幅させている気がした。

 

ホームセンターのレジでは、女性店員が購入した皿を包装している時に飲み

特定の人物に見られていると確信しながら飲むのも、それはそれで興奮するのだった。

 

公園では、子供とその母親達が賑わっている中飲んだ

日常の平和な風景に潜む狂気の沙汰に僕は震えた。たまに子供達を凝視しながら飲んだ。この行為が何なのかと聞かれたらわからないが、確実に背徳感に似た感覚を覚えていた。

こうした日常のなんでもない風景の中、普通の人は思いつかないだろう行動で気持ちが舞い上がる気持ちは物凄く理解できた。

というのも、実は私も同じようなことを楽しんだことがある。

似たような経験

仕事中に片耳イヤホンでAVを聴いたことがある。周囲の人は「あ、音楽聞きながら仕事してるんだ」程度にしか思わなかっただろうが、耳に入ってくるのはJ−POPでもクラシックでもJAZZでもなくAVだ。その状態で何事もなく仕事をしていた。

メールを返し、サイトの仕様書作り、アクセス解析をし、外部の制作会社にチャットワークで業務を依頼するという、普段のしごとである。

しかし、当方の片耳に入ってくるのは、職場では聞こえてはならない"あの”声だ。

また、ワイヤレスイヤホンという、いつスマホとの接続が切れるか分からない状況も興奮度を高めてくれた。

というように、まるで岩井氏のエピソードを自分なりの当てはめたようにも聞こえてしまうが、こうした話が多いのだ。

一言で言えば、なんか分かる!である。

状況は当然違うけど、似たような経験を思い出させてくれた。

もう1つ例に出すと、【空虚な誕生日パーティー会場に"魚雷”を落とす】の内容も「あー無茶苦茶分かる笑」だった。

その話は、岩井氏は人が沢山集まるようなパーティーや飲み会が苦手で、それは社交性がないのではなく、参加者がどんな思惑で参加しているのか?と考えるのが疲れるとのこと。

そして、自分で自分の誕生日パーティーを開く人を「すごい」と小馬鹿にしている。

そんな岩井氏に何年も会ってない女性の知人から、その知人自身の誕生パーティー参加のお知らせが届いた。

断ることもできたが、受けて立とうという気持ちが芽生え、参加した話だ。

当然岩井氏が心からお祝いしようという気はなく、自分が描いた絵をプレゼントし、浮かれムードに水を差すという狙いである。

そしてパーティー当日に自分が描いた絵を渡し、誕生日パーティーで流れることのない【空白の時間】を作り出すことに成功し、心の中で歓喜した。

この話を聞いて「え?なんでそんなことするの?嬉しい気持ちが全く分からない」と考える人は、面白さの方向が違うので理解に苦しむだろう。

私からすれば

チューニ
もう岩井勇気じゃなくて勇者やん!

である。でも、どこかで経験あるな〜と振り返ってみると、10年以上前に今は連絡先さえ知らない同級生の女性が自ら開催した誕生日パーティーに参加したことがあった。

同級生の誕生日パーティーにて

その同級生は、私のような地味男にも優しく、自分の誕生日パーティーを開催できる程の人気者であることも知っていた。

ただ、案内メールの中に「最高にオシャレしてお越しください!」という一文を見つけてイラッとし、一緒に参加した友人らと変なコスプレをして参加することにしたのだ。

私はラモス瑠偉、友人Aはスーツ姿にワイシャツの胸部分を切り取ってB地区丸出し&プロレスマスク、友人Bはオタク、友人Cはアルシンド風のズラ着用という感じに。

今考えると壮大にスベっている気もするが、周囲がお呼ばれ用ドレスやテッカテカのスーツを着用する中、微妙なコスプレで会場に現れた私達を見て周囲は引いていた。

会場内に聞こえるのがバックミュージックだけになった時、なぜか「勝った!」という気持ちを得てしまった。

この時の話を思い出した。

その他のエピソードも「分かる」「だよね」の連発。あっという間に読み終えてしまった。

 

岩井勇気への共感

恐らく今後の人生で岩井勇気氏と会うことも話すこともないだろうし、会ったところで話すことは何もないだろう。

でも、勝手ながら同じ部類に入る人間なんだなと確信した。

私も普段は【大人しそう】【つまらなそう】という印象を与えがちで、パリピと呼ばれるような人達とは一生交わらないだろうし、その必要性も感じてない。

そもそも、そういう人達を違う角度から面白おかしく見ているところがある。

メガネ君
それで楽しいの?

は、余計なお世話である。

オードリーの若林が書いた【斜めの夕暮れ】にも書いてあったが、”無口ではなく、自分と多く話している”ので、つまらないということはない。

そう考えると、表面上だけで面白いか否かを決めるのは無意味なことでもある。

何が楽しくて何が面白いかを測るメジャーは本人の中にしかなく、他人の口出しは不要なのだ。

何より、静かな印象を与える人の内面ほど面白いものはないということが分かった。

澤部佑に対する考えも「なるほどな」と、非常に納得する考えを述べている。

面白いエピソードだらけなので、また見返すことになるだろう。

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